酔っ払いと公衆便所

アカン吐きそうや

よろしい、ならば戦争だ。


怒髪天/労働CALLING - YouTube

薬物アルコール厚生施設の朝は早い。特に今私のいる高齢依存症者の寮は朝がとても早い。朝が早いと言っても我々介護スタッフが動き出すのは深夜二時半、「俺昨日全然寝てねーわ」なんて「寝てねーわ自慢」していたら多分3日で潰れる。入寮者40人に対して介護スタッフは四人。もし深夜に急患やポリス沙汰、失踪、飲酒、違法薬物の摂取喧嘩があれば問答無用で対応しなければならないので負担は増えることはあっても減ることはない。いつも私達は過労と寝不足である。昔と言っても半年前まではまだスタッフ6人で回せていたが高齢依存症の入寮急増でスタッフのうち二人は潰れてしまい退寮今現在に至っている。一応介護福祉士の免許を持っている私。おむつ交換が得意な私。比較的断ることのできない私。車椅子移乗の際本来ならばありえない怪力を発揮する私。いまは便利に使われている。泣きたい。酒なんか飲まなければよかったと涙涙の日々である。

高齢依存症寮での役目は深夜二時に起床。その後現物と呼ばれる14人分のお菓子とタバコとジュースを用意。(現物とは更生施設で問題行動を起こし一日千円の日払いを受ける資格がなくなった人に与えられるもの)それを枕元に忍ばせつつ前の日に出た洗濯物を回収。ここで頭にくるのは「毎日清潔にしといてくれろ」とかごを用意しているにもかかわらず大半の連中は着たきりスズメで中には半年に一回ほどしか入浴しないものもおり謎の小虫が押入れに発生。絶望的な気持ちにあさからなってくる。そんなこんなでなだめすかしたり脅しつけたりして約10人分ほどの衣類を回収し二層式洗濯機に放り込む。水を貼って洗濯機を回しているとドンドンみずがどす黒く濁っていき私の心も地獄の窯のような気持ちになってくる。で。パンね。パン。朝みんなに出すパンを用意するんだけれどもなにしろ40人分なので皿の上にパンをのせるだけでも30分。このパン名前を「モーニング・スター」と言い、多分西洋の戦闘用の武器からとっているのは間違いないと思われるほどの硬さでそのまま出したらヤク中ジジイが誤嚥で死ぬんではなかろうか?という代物で俺的にはそっちのほうが助かるのでかまわないっつーかでも道徳的にはどうなの?って感じになるのでレンジでチン。この時点で午前四時。午前五時には朝食である。この間に車椅子の連中のおむつ交換を済ませて洗濯物を干す。いつもギリギリであるがなんとかする。午前五時。朝食。地獄の始まりである。


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高齢依存症者。奴らは並ばない。パンをいかに早くかすめ取るか、いかに足に負担のかからない椅子に腰掛けるかそれだけを考えている。人のことなんて考えていない。押し合いへし合いどつきあい。気分はもうアフリカ。15人収容の食堂に平気で20人ほど入ってくる。座れない。ぶつかる。押される。悲鳴。絶叫。宙を舞うパン。こぼれるコーヒー。どつかれる頭。罵声。怒号。これが毎日である。午前七時まで。最初はこちらも「押さないでくださーい」や「並んでくださーい」と言っていたが一向に改善されないのでだんだん「並べボケナス」や「押すな死に損ない」といったラジカルな言葉遣いになっていきここ最近では「このやろうぶっ殺す」と絶叫。発狂。このへんになってくるともう戦争かな。午前九時になると依存症爺さんたちは高齢者の集まる施設に移送される。ここでやっとひと呼吸。しかしまあなんというか人にもよるだろうが齢を重ねるとここまで利己的排他的になれるのである。ここは老人ホームでも病院でもない。施設である。あんな爺さんみたいに自由に生きられるんだったら社会復帰しなくてもいいかな?なんて思えてくる今日この頃である。


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